■炭素固溶拡散処理とは
オーステナイト系ステンレス(SUS316等)の耐食性を維持しつつ表面を硬化させる、今までにない画期的な技術が、炭素固溶拡散処理(たんそこようかくさんしょり)です。活性化処理技術を応用し、炭素固溶拡散処理を行うことで強靭かつ美観に優れたステンレス表面を維持します。
■基本原理
炭素固溶拡散処理では、オーステナイト系ステンレスを低温域(500℃以下)で処理し、金属表面から炭素を固溶拡散させることで表面を硬くする独自の処理です。

炭素はステンレスの結晶構造(オーステナイト)の隙間に入り込み、これによって結晶格子が膨張し表面硬度が上がる仕組みです。このように炭素を“化合物”としてではなく、“固溶”の状態で導入することにより、表面は硬くなりながらも内部の靭性(粘り強さ)を保てるのです。

■断面組織と硬さ
表面硬度はステンレス母材の4倍にもなり、高い表面硬度が得られ、耐摩耗性や疲労強度が著しく向上します。硬質クロムメッキの数十倍、窒化処理と同等以上の耐摩耗性を有します。

■耐食性

■他処理との比較
炭素固溶拡散処理は、従来の浸炭処理や窒化処理とよく比較されることがあります。それぞれ処理の特徴が異なりますが、窒化処理と比較しても耐食性に優れている点が炭素固溶拡散処理の最大の特長です。

■特長とメリット
✅ 表面硬さアップ:炭素が結晶格子に入り、硬さと耐摩耗性を向上
✅ 耐食性に優れる:ステンレスの耐食性・非磁性を維持
✅ 寸法精度を保持:低温処理のため変形が少ない
✅ しなやかさ:メッキや窒化層と異なり、曲げても亀裂や剥離が生じない

■ まとめ
炭素固溶拡散処理は、ステンレス表面に炭素を拡散させて硬化させる低温固溶拡散処理です。「硬く、錆びにくく、処理時に変形しにくい」そんな理想的な特性を実現できるこの技術は、自動車部品・半導体装置部品・医療機器など耐久性と耐食性を求められる分野で採用されています。
精密部品の長寿命化やメンテナンスコスト削減をご検討の際は、「炭素固溶拡散処理」を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
寿命対策や表面処理でお困りの際は、平塚工業にお気軽にご相談ください。